WEBエンジニアが考える<小中規模サイト>のレンタルメールサーバの選び方 – セキュリティーが命

はじめに

システム構築の案件では、システム制作だけでなくレンタルサーバの選定まで私が行うことが多くあります。今回は<小中規模サイト>のメールサーバとしてレンタルサーバを選ぶ際、WEB開発エンジニアの私がどこに注目して比較・検討するか、重要だと思っているポイントをまとめてみました。

サーバ選定の上で、絶対に必要項目《必須項目》と各自の運用方法に沿って自由に選択して問題のない《自由に選択》と分けて説明していますので、メールサーバ選定で比較・検討されていいらっしゃる方、お悩みの方の参考にしていただけたら幸いです。また、WEBサーバをレンタルされる際には一般的にメールサーバ機能も含まれていますので、メールサーバの部分だけに限りますが、参考にしていただけたら幸いです。

まずは、「予算はどのくらいかけられるのか」と「最低限必要な機能」を決定しておきます。「最低限必要な機能」は下記のポイントで説明しますので、参考にしていただけたらと思います。


私がよく使う、またクライアントにおすすめするサーバは、たいてい3社ほどに絞られます。比較検討されている会社の機能を見ながら、これから解説するポイントをご参考いただけたらわかりやすいかと思います。


年間(月間)の利用料《自由に選択》

ポイント1

・最低限必要な機能をまず決定し、年間利用料の安い順にプラン内容を洗い出す
・安いだけでは決めず、最低限必要な機能を確認する

使用したことのあるお気に入りのサーバ会社がある場合には、サーバ設定やコントロールパネルの使い勝手が分かっているところを選ぶのがベストかと思います。
ただし、初めてサーバを契約する時や、使用しているサーバに希望のプランがない場合は、
各社のまず価格の安いプランからエクセルなどに順に記述し、「利用目的にあったものか」「必要な機能があるのか」をチェックし不必要なものを省いていくことで、自ずとコストパフォーマンスに優れた最適のプランにたどり着くかと思います。
安ければそれに越したことはありませんが、価格とともに【ポイント2】以下で説明する「最低限必要な機能」が選んだプランにあるかは必ず確認してください。


サーバが暗号化に対応していること 《必須項目》

ポイント2【!これが重要!】

メール送受信時の暗号化が装備されているサーバの選定が必須
・ただし、確実に暗号化するにはメールソフトの設定が正しくないと意味がないため、設定マニュアルが整っているサーバ会社を選ぶ

価格よりもディスク容量よりも、なによりも重要なのは 暗号化の標準装備かと考えます。
ここで言う「 暗号化 」とは、メールを送受信する際に暗号化してくれるかどうかです。

暗号化して送受信するには、

・サーバが暗号化に対応していること
・使用しているメールソフトが暗号化に対応していること
・メールソフト内の設定で”暗号化するための設定”が選択されていること


ことが条件となります。

まずはサーバが暗号化技術を装備しているかを必ず確認してください。現在はほぼどのサーバも装備しているはずですが、もし装備していないサーバは避けることをおすすめします。
暗号化の方式としては、STARTTLS,IMAPS(IMAP over SSL/TLS) ,POP3S(POP3 over SSL/TLS)などといったものがありますが、ここでは省きます。さらに詳しく知りたい方は、調べてみてください。

またメールソフトの設定が間違っていれば、いくらサーバが暗号化に対応していたとしても意味がないといったことも覚えておいていただければと思います。そのためにも、FAQやマニュアルに詳細なメールソフト設定方法の記載があるサーバ会社を選ぶことをおすすめします。


補足

現在、WEBサイトにブラウザを使って接続する際にSSLという暗号化技術を使用し個人情報も暗号化し安全に送信できるようになっていますが、同じようにメールの送受信時にも暗号化し送受信することができます。
ただ問題なのは、WEBサイトの場合「https://」から始まるURLがSSLで接続したサイトだということがひと目で分かりますが、メールの方はメールソフトの内部で処理しているため、「今暗号化されて送受信されているんだ…」といったことがひと目で分かるといったことはありません。普段、なにも気にせず送受信しているような状態になりがちですが、メールこそ重要なデータや個人情報を送信することも多いと思いますので、暗号化に対応したサーバを選び、メールソフトは適切な設定にすることが必須となります。


安定稼働すること 《必須項目》

ポイント3

・速度よりも安定稼働
・迷ったときは、サーバ歴の長い会社や上場している会社を

常時安定的に稼働してくれていることは本当にありがたく思います。
サーバの速度ももちろん重要ですが、それよりも安定稼働がより重要だと考えます。
トラブルがないように安定して常に稼働してくれることが理想ですが、実際のところ1年に1回は不調があるような気がします。

各社とも安定稼働には重きをおいているところだと思いますので、どこもそれほど大きく変わらないと思いますが、それでも気になる方は「サーバ運営の長い会社」「上場している会社」などがおすすめです。
サーバ運営が長ければ長いほど様々なノウハウを持っていると思われますし、上場しているところであれば信頼がおけるのはもちろんのこと不具合が起き長引けば利用者だけではなく株主からのプレッシャーもありますので、ミスは極力ないように努めていると思われます。それでも「絶対大丈夫」はありませんが。


さて、
これ以降は、機能の有無や容量といったものですので、各自で必要なものが違うかと思います。
機能の比較・検討の参考にしてみてください。
ちなみにここからは、実際に契約しているさくらインターネット のプラン例を参考にしてまいります。


サーバディスク容量《自由に選択》

メールボックスの全体の容量です。これを上回るようだとアラートが飛んできたり、それ以上のメールは受信できなくなるので、重要な部分です。必要なアカウント(ユーザー)数と1アカウントのメールボックス容量から大まかに計算できます。

(参考)

さくらのメールボックスの場合は、サーバディスク容量10GB。
さくらのレンタルサーバ スタンダードプランの場合は、サーバディスク容量100GB。


最大メールアドレス数 《自由に選択》

必要な数を作れるかを確認します。
たいていのプランは、無制限や100以上は作れるのではないかと思います。

(参考)

さくらのメールボックスは、メールアドレス数無制限
さくらのレンタルサーバ スタンダードプランは、メールアドレス数無制限


1アカウントのメールボックス容量上限 《自由に選択》

IMAPで運用することを考えている場合、こちらが最大の確認すべきポイントかと思います。
どこのメールサーバでも、1メールアドレス毎に1MB単位でメールボックスの容量が割り当てできる機能がついています。そして、1メールアドレスの最大容量というものも存在しています。
これはとても重要なことですが、残念なことにプランの説明欄には大きく書かれていない場合がありますので、ぜひこの容量をヘルプページや問い合わせで確認してください。

IMAPで運用する場合には、こちらの容量の領域にメールが格納されていきます。
言うなれば、GoogleDriveやiCloudなどのオンライン上の自分のストレージに相当する部分です。
これが少ないと、画像データや企画書、大きな添付データをやり取りしている方はすぐに容量がいっぱいになってしまい、その容量を増やすために過去のメールを消す…といった煩わしい作業が待ち構えています。
いざ契約したけれど、上限の容量が少なすぎて解約せざるを得ない…ということもありますので、こちらは必ず確認おくことをおすすめします。

さくらのメールボックスの容量は2GBですが、これが十分なのか少なすぎるのかというと人それぞれだと思いますが、基本的にIMAPでの運用は過去メールを毎度消していくということはせず、メールが一方的に増えていくことになりますので、5年、10年…経つといずれ2GBという容量でも足りなくなってくるでしょう。
重要なのは、そうなった時どうする?のか、
・新しいサーバへ移行するのか?
・新しいサーバへ移行の手間・費用が煩わしいのであれば、はじめから容量に余裕をもたせたプランにしておくのか?
をきちんと考えておくことが必要かと思います。

(参考)

さくらのメールボックスは、上限2GB
さくらのレンタルサーバ スタンダードプランは、上限20GB

ちなみに、私はとりあえず上限2GBで運用してみて、上限に達しそうなタイミングで新サーバへ乗り換えようということでさくらのメールボックスを選択しました。
実際には、さくらのメールボックスを契約してから5年後に上限2GBに達し、その後さくらのレンタルサーバ スタンダード プラン(上限20GB)へ乗り換えました。


マルチドメイン対応可否 《自由に選択》

複数の独自ドメインでメールアドレスを運用したい場合には、対応しているプランを選択します。
大抵のプランは、対応しているかと思います。

(参考)

さくらのメールボックスは、マルチドメイン対応(最大20個)
さくらのレンタルサーバ スタンダードプランは、マルチドメイン対応(最大200個)


IMAP対応可否 《自由に選択》

IMAPとはメール受信方式の一つで、ほかにPOP3があります。
IMAPのメリットはサーバ上でメールを管理しているためPCやスマートフォンやどんな端末からでも同じように参照できるようになります。
ただし、メールを削除してしまうと、どの端末からも消えてしてしまいますので、メール削除の際は注意が必要です。
IMAPで最も便利だと感じたのは、メールサーバを移行したときに旧サーバから新サーバへメールデータを簡単に移行できることです。こちらの方法は、またの機会に説明したいと思います。

(参考)

さくらのメールボックスは、IMAP対応
さくらのレンタルサーバ スタンダードプランは、IMAP対応


運用体制・サポート 《自由に選択》

どこのプランも24時間監視での運用体制がありますなどの記述がありますが、障害は起こるときには起こります。障害が起こったときには、ユーザーはひたすら復旧するのを「待つ」しかありませんので、サポート体制はどのような感じか…程度にとどめておくくらいでよいかと思います。

普段のサポートという点では、個人的に便利だと感じたのは「チャット」でサポートが受けられるところでした。実際、何度かチャットで問い合わせをしたことがありますが、リアルタイムでやり取りでき終わってからも会話が文章として残るので電話よりもメールよりも便利と感じました。

・運用体制とサポートは参考程度に知っておく、実際の障害時は復旧を「待つ」
・障害時以外のやり取りの方法はチャットサポートが便利

(参考)

さくらのメールボックスは、 サーバー監視体制24時間365日、メール・電話・チャットサポート
さくらのレンタルサーバ スタンダードプランは、 サーバー監視体制24時間365日、メール・電話・チャットサポート


おわりに

メールサーバを選定する際に重視するポイントをいくつか列挙しました。
サーバ運用経験の少ない方は、あまり細かいところまでWEBサイトの文面で比較していても、実際使用してみないとわからない部分もありますので、最低限必要なものが揃っているところでまずは使用してみるのが良いかと思います。
複数のサーバ運用経験あるエンジニアがお近くにいれば、相談してみるのも近道かと思います。

また、レンタルサーバになにか起こったときには、ひたすら復旧するのを「待つ」しかなく、とてももどかしい時間です。頻繁ではありませんがどのサーバでも年に数回は繋がりにくいといったことは発生しているような気がしますので、レンタルサーバを借りる以上障害はつきもだと考えておくのが良いかと思います。

ただ、それがレンタルサーバの不具合なのが、自分の会社(自宅)のネット回線の不調なのかといったことの把握は、知識がなければなかなか大変だと思いますので、いざとなったときに相談できるネットの「かかりつけ医」のような方と連絡が取れる状態にあると、なにか起こったときにアドバイス等受けられるので安心できるのではないかと思います。

みなさまのサーバ選定のご参考の一つになれたら幸いです。


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